「ジャポニスム振興会」設立によせて、役員の皆様からメッセージを頂戴しました。
下記、敬称略にて紹介させていただきます。
加賀 乙彦(作家・文化功労者)
日本語は世界一美しい言語だと思います。まずはその表記が漢字、ひらがな、カタカナをまぜて使うことによって美しい文章を作ることができます。古典から現代語まで日本の文章の美しさに触れて、私はこのごろ、つくづくとこの国に生まれてよかったと思っています。
高階 秀爾(東京大学名誉教授・大原美術館館長)
ジャポニスムは、単に日本の文化・芸術を紹介するだけのものではありません。芸術や文化には、長い歴史に培われた日本人の美意識、精神、思想が反映されています。ジャポニスムは、その日本の心を世界に伝える使者なのです。
鶴賀若狭掾(鶴賀流十一代目家元・(人間国宝)重要無形文化財保持者)
近頃、海外の人の方がむしろ日本文化を学んでいます。かえって日本人が日本文化について話せない。英語が話せたら国際交流ができると思うのは大きな誤りで、恥ずかしいことだと思います。
私の役目は新内を伝えることで、その使命をいただいていることが自分の喜びです。
ジャポニスム振興会は日本文化を再び認識してもらうという共通の目標をもつ仲間だと思っています。今後も日本の文化、心を地道に伝えていきましょう。
中西 進(日本文学 比較文学者・文化勲章受賞)
日本とイズムを結合させたところに、単なる伝統の紹介や文化の輸出ではなく、「日本的なるもの」の普及を求める、新しい運動の意義を感じます。かつてヨーロッパを風靡したジャポニスムの第二波が、大きく豊かに、海外に向けて発信されることを願っています。
芳賀 徹(比較文学者・東京大学名誉教授)
いま二十一世紀の世界に向かって、日本列島でつちかわれてきた文化の豊かさ、深さ、高さを伝え、ひろめることは、世界にとっても、この日本にとっても、きわめて大切な仕事だ。遠い縄文、彌生また古事記、万葉集の時代から、古今集、源氏物語また能楽や茶の湯をへて、「徳川の平和」(パクト・トクガワーナ)のもとの民衆文化の百花繚乱、そして明治・大正時代の西洋文明との混血の美の発揮にいたるまで、この列島の住民たちはなんと活発に、ひたすらに、藝術による生活の豊かさを求めつづけてきたことか。連綿として途絶えることのないこの文化創造の活動は、日本敗戦の暗黒のなかからもやがて国民を救った。しかも日本藝術の長い歴史は、どこをとっても人間に普遍の美しさ、やさしさを宿している。これを積極的に東西世界に伝えることによって、グローバリゼーションに喘ぐ時代のなかに緑ゆたかな生命の大樹を植えつけ、はぐくんでゆこう。
室瀬和美(重要無形文化財「蒔絵」保持者(人間国宝))
日本の工藝文化は自然素材を活かし、用の機能を有した中に美を求める精神性の高さを造形化する世界です。天平時代の正倉院宝物や平安時代から続く伊勢神宮のご神宝類の多くが工藝作品であることを見れば、工藝は日本の美の象徴として今に伝えられていることが分かります。
現代に生きる私たちも、自然との関わりから生まれる美意識を次世代に繋げ、持続可能性のある日本の工藝文化を21世紀のあるべき姿として世界に発信したいと願っています。
山折 哲雄(宗教学者・国際日本文化研究センター名誉教授)
これまでの日本を静かにふり返る
脚下の大地に日本の芯を刻む
前方にひろがる世界に日本の未来を描く
そんな「ジャポニスム」の夜明けであってほしいと思います。
冷泉為人(公益財団法人冷泉家時雨亭文庫理事長)
ジャポニスムは、「日本人」あるいは「日本人の心」というもの(・・)、こと(・・)です。この日本人には、ヨーロッパ・アメリカの欧米人とも、イスラム圏の中東人とも、中国・韓国・東アジア諸国の東洋人とも、アフリカ人とも南米人ともちがう「心」、「ところ」があります。この一例として西洋人と比較してみますと、西洋人は一神教・理知・論理・客観であるのに対して、日本人は多神教・情趣・文学・主観などというちがいがあります。いずれにいたしましても、日本人は多様なものを多様なものとして認めていく「心」があります。こうした考え方が、混沌とした現代社会にあっても、ひとつの考え方として大事であり、必要になってくるのではないでしょうか。
冷泉貴実子(公益財団法人冷泉家時雨亭文庫常務理事)
日本文化は世界における特異な存在のように思う。先端科学を応用した、ロボット、IT産業は世界をリードする日本の代表的産業である。一方日本のあらゆる所に、その起源もわからぬような古い伝統行事が脈々と受けつがれている。歌舞伎・能などの伝統芸能は絶大な人気を誇っている。この不思議の国の魅力を世界に発信したい。
笹岡 隆甫(華道「未生流笹岡」家元)
西洋のフラワーアートは、満開の花をたくさん敷き詰めて、花のカーペットを作り「最高の瞬間」を演出するが、いけばなでは「時間経過」を大切にする。開いた花があってもよいが、必ずつぼみを残していけあげる。つぼみは、やがてほころび、盛りを迎えて、ついには散っていく。
日本人は、その命の移ろいを最後まで見届けることで、花から様々なことを教わる。太陽の方を向いて咲く花からは、逆境でも向上心を持って生きることを。つぼみが徐々に開く姿からは、年齢を重ねていくことの素晴らしさを学ぶ。日本人にとって、花は、自己表現のための「道具」ではなく、私たちに様々なことを教えてくれる人生の「師匠」のような存在だ。いけばなは単なる「アート」ではなく、「哲学」でもある。
ジャポニスム振興会には、いけばなをはじめとした日本文化、およびその背景にある想いを、世界に向けて発信する役割を、ぜひ担ってほしい。
竹石 松次(新潟放送顧問)
世界の経済や文化が大きく渦巻く中で、それぞれの持つ伝統文化の継承や発展が重要課題となっている。このような中にあってジャポニスム振興会が目指す文化を大切にする信念は今や世界の動向と密接な関りを持つ。
芸術や文化の興隆こそ地域と世界を結ぶキーワードではないだろうか。
田中 朋清(石清水八幡宮 権宮司)
日本文化に内在する智恵は、私たちのご先祖さまから連綿と受け継がれて来た愛の結晶であり、世界の恒久平和を実現する為に欠くことのできない人類普遍の智恵に満ちています。有難い御縁に心より感謝しつつ、皆様と共に歩んで参りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
橋本 忠樹(観世流能楽師)
日本には人々が守り伝えてきた「もの」があると思っています。特に目には見えない「もの」。日本の伝統には見えないものがいっぱいつまっています。大切に守られてきたものを受け継ぎ次世代へ伝える心。伝える度につみ重なるあたたかい心。心は言語を越えて人を結びます。「もの」がつまったあたたかい心を広げていきたいと思います。
藤田 裕之(元京都市副市長・京都市国際交流会館館長)
人口減少をはじめ「右肩下り」の縮小社会に直面し、私たちがこれまで大切にしてきた文化・芸術や精神性を基盤に持続可能な社会のあり方を世界に発信することが、わが国の使命となっている中で、ジャポニスム振興会の活動は益々重要になると確信しています。