宇崎竜童 ジャポニスム・マイスターVol.6
2015年1月13日放送/レポート
今回の「ジャポニスム・マイスター」のゲストは雅楽師の東儀秀樹さん。
幕開けは、宇崎さんの「この道に入ったのは、やはりそういう家に生まれたからなんですか?」という問いから。ところが、想像に反して「高校時代までは、ロックが大好きで、雅楽の楽器は演奏したことがありませんでした」という答。昔は雅楽師の家に生まれたら皇室に仕え雅楽師になるのが奈良時代からの伝統だったが、今は自由なのだそうです。ところが、母親からそんなに音楽を好きなら雅楽もやってみたら、といわれたのがきっかけでこの道に入ることに。
その後、話は雅楽の楽器へ。スタジオで実際に音を出しながら、東儀さんによる雅楽の楽器の解説が始まりました。
「笙は、天から降り注ぐ光をあらわしたもの。篳篥(ひちりき)は、地上の音、人が歌うときの声の感覚。竜笛は、天と地の間を行き交う竜の鳴き声、空間を表します。雅楽はこの3つが核となり、天と地と空を合わせた音楽で、それがそのまま宇宙を表します」。宇崎さんも「雅楽の音を聞いていると、宇宙を音にしたらこうなるのでは」と感じたということ。
すっかり波長があったところで、バイオリンの古沢巌さんと、アコーディオンのcobaさんとのコラボの話へ。
「3人で共演すると、自分たちがいまでやったことがない音楽を作り上げることができるのがいい。何より、ステージで『この人すごいから聴いてよ』と自慢したくなるような関係がいい」と東儀さん。「ぜひ今度ご一緒に」という東儀さんのお誘いに、うれしそうでいて、謙遜しながら遠慮する宇崎さんの様子が印象的でした。
最後に、雅楽を通して感じる和の心とは、という宇崎さんの恒例の質問に、
「日本の美学というとよく『わび』とか『さび』とか言われますが、実はその何百年前から、日本には『雅』という美意識がありました。日本は、とても小さな島国で、北に行っても、南に行っても、あついも寒いもわかり合えます。また、地理的にも日本は絶妙な位置にあって、四季がしっかりあって、山もあって、海もあって、色とりどりな豊かなものに囲まれているから、それが日本人の感性をつくっています。春には、春のわくわくする感じ。秋には、せつなくなるようなキュンとする感じ。桜の花ひとつとっても、華やかな美しさと、散りゆく美しさ。雅とわびさびを桜一本で語ることができます」と語る東儀さん。
そのような日本人の精神が『雅』や『わび』とか『さび』の根底にあるのだという印象的な話で締めくくられた、まさに「ジャポニスム」な放送でした。
- 東儀秀樹 Profile
1959年東京に生まれる。
東儀家は、奈良時代から今日まで1400年間雅楽を世襲してきた楽家である。父の仕事の関係で幼少期を海外で過ごし、ロック、クラッシック、ジャズ等あらゆるジャンルの音楽を吸収しながら成長した。高校卒業後、宮内庁楽部に入る。楽部では篳篥(ひちりき)を主に、琵琶、鼓類、歌、舞、チェロを担当。宮中儀式や皇居において行われる雅楽演奏会などに出演するほか、海外での公演にも参加、日本の伝統文化の紹介と国際親善の役割の一翼を担ってきた。その一方で、ピアノやシンセサイザーとともに雅楽の持ち味を生かした独自の曲の創作にも情熱を傾ける。
1996年デビューアルバム「東儀秀樹」で脚光を浴び、以後次々とアルバムをリリース。
2000年「TOGISM2」で日本レコード大賞企画賞を受賞。同年「雅楽」以降8度にわたり、ゴールドディスク大賞 純邦楽・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
最近では、映画「源氏物語」(主演:生田斗真)にも一条天皇役として出演。また、東日本大震災後は震災に対するチャリティ活動に参加しコンサートにも参画。特に子供たちにむけて支援を行った。アルバム「子供たちに優しい未来を」にはそんな意味を含めての曲「子供たちへ優しい未来を」が収録されている。
2012年3月に15周年記念アルバム「TOGI」をリリース。全米と同時発売となった。 また、2012年3月、米国桜植樹100年開会式に招待され、 ワシントンのコンベンションセンター、ケネディセンターで演奏しアメリカでも注目を集めた。 2013年夏、初のカバーアルバム「hichiriki ballad」を発売。
2014年、第2弾カバーアルバム『hichiriki romance ~好きにならずにいられない』発売。 さらに東儀秀樹・古澤巌・cobaのコラボアルバム『TFC55』も同時発売。 10月には日本スイス国交樹立150周年を記念し、TFCとしてジュネーブ及びベルンにて公演を開催した。著書に『すべてを否定しない生き方』『雅楽:僕の 好奇心』などがある。 皇學館大學特別招聘教授、また上野音大、名古屋音大、池坊短大、大正大学、國學院大の客員教授を務める。 また、乗馬、クレー射撃、バイク、クラシックカー レース参戦、ダイビング、陶芸、ギター、世界の民族 楽器の収集、イラスト、写真、マジックなど、幅広い 趣味人としても知られている。