JAPONisme Vol.2 – 2014年7月号
2014年7月1日発行 第2号
CONTENTS
- 乞巧奠によせて – 織りと糸の源流をたどる
- 日本人の良識 – 宗教学者ひろさちや氏 4/18講演内容の要約
- 袈裟の話
- 名取裕子と大谷祥子のきもの談義
- ジャポニスム振興会 十月公演「能の来た道、日本のゆく道」、全16ページ
今号の試し読み:「復元から現代の意匠まで。龍村美術織物」
最初にうかがうのは龍村美術織物。帯はもとより、正倉院裂や名物裂の復元であまりにも高名です。また、宮尾登美子氏の『錦』(財団法人本願寺維持財団 第六回親鸞賞受賞作)は龍村美術織物がモデルです。
下三点の写真は、奈良大仏建立の聖武天皇ご使用と伝えられる、正倉院宝物の「七条織成樹皮色袈裟」を、龍村美術織物で復元されたものです。「織成」はつづれ織りの一種ですが、高度な技術のこの織りの実物は、現在、世界でただ一つ。当宝物でしか見ることができません。
初代が大正十三年から手がけた右は、調査スケッチと写真を元に復元。三代は精緻な写真を参考にし、当代(四代)はマイクロスコープなどの最新機器を駆使したため、色味や柄ゆきに違いが出ました。
宝物も時の流れには逆らえず、劣化が徐々に進みます。復元作業により、古代の技術が解明されてゆくのは、心強いことであり、また復元により、組織や製織における新しい発見もあるそうです。
上の大宝相華唐草文錦もまた、大正十三年当時管理の帝室博物館の委嘱により復元されたものです。平成三年には琵琶の袋「大宝相華唐草文様」を再度復元、実際に琵琶を納めることができる琵琶袋が復元されました。「宝相華」とは、牡丹や蓮の花をモチーフとしたごとき華やかな柄で、隋、唐の時代にさかんに用いられました。
初代は織りの研究で、多くの実用新案を取得しましたが、二ページの丸帯「纐纈織大政所裂文」もその一つです。纐纈(こうけち)とは絞り染めのことですが、たて糸よこ糸に強撚糸を使う織り方により、あたかも絞りのような凸凹を出す、立体的な織物です。
さて、近代までは人の手にのみ頼った精緻な織物ですが、現代はいささかの機械化もされています。初代龍村平蔵は、ヨーロッパから明治六年に導入されたジャガード機に着目、「空引機」と呼ばれた二人がかりの織機を機械化。それにより図案の重要性が増すと考えた初代は美術学校の卒業生を積極的に採用し、当時学生だった堂本印象など、優れた絵師に図案を描かせました。五ページ右下の「紅毛色絵錦」は堂本印象画伯の下絵をもとに図案構成された袋帯です。
復元や新しい試みに熱心であった初代から、現在は四代龍村平蔵の時代です。四代のメインテーマは南蛮の工芸品。ガラスや陶磁器、螺鈿などから想を得た、品格ある帯が創出されています。五ページ左の「ぎやまん錦」帯袋をご覧ください。カットグラスの輝きを織で表現した、伝統の中にきらりと光る、なんと斬新で美しい工芸品ではありませんか。
(続きは会報誌Vol.2「乞巧奠によせて – 織りと糸の源流をたどる」をご一読ください。)
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