JAPONisme Vol.5 – 2015年春
2015年4月1日発行 第5号
CONTENTS
- 宇崎竜童インタビュー「ジャポニスムを語る」
- 京(みやこ)の人形 島田耕園の御所人形
- 京(みやこ)の人形 關原紫水・關原紫光
- 親鸞賞座談会 和田竜氏(平成26年第8回親鸞賞受賞)とジャポニスム振興会会長他
- 暮らしの中のワンポイント「愚癡」
今号の試し読み:京(みやこ)の人形 關原紫水・關原紫光
万事伝統を旨とする京にあって、關原紫水は、独自の境地を開いた初代の古典創作京人形師である。細部にこだわった衣装や髪型は華麗かつ優美。海外での評価も高かったが、2014年に他界。今は娘の紫光が後継者として歩んでいる。
紫光はこう述懐する
「子供のころ、父は人形の髪付職人として生計を立てていましたが、完成した人形を作りたいという想いから工夫をして大好きな人形を作り続けたのです。父を見るうち、いつしか私も人形を作りたいと願うようになりました」
従来京人形は、頭師、髪付師、手足師、着付師という風に分業であったが、紫水は、頭、手足以外は創作する。衣装の図柄の刺繍は本職の刺繍師に頼み、描ける部分は自分で手描きした。ほとんど一人で完成させることで、イメージに違わない、芸術的な人形が完成する。
高さ30センチほどの人形である。それなのに精緻な刺繍の半襟や衣装、帯の細やかな金襴の柄は、等身大にしてもおかしくない存在感と、リアルな美しさがある。
もともと日本画家志望だった紫水は、3歳から人形遊びをしたというから、戦前の日本男児としては珍しい存在。運命の導きがあって人形師となってからは、髪付や衣装製作の技術を極め、人体学も研究して、他の人形作家の追随を許さない存在となっていく。タイ王室に人形を献上。紫水は2004年に春の叙勲で瑞宝単光賞受賞の栄誉も受けた。
「人形作りには、ただ物を作る以上のなにかがあると、ふと感じます」「京人形を海外に伝えることは、日本人の精神性を伝えることでもあるのではないかと」
そう話す紫光は、両親に反発した時期もあったが、今、黙々と人形作りの手を動かす。
その手にそっと亡くなった父の手が添えられているように感じつつ。
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