醍醐味 dai-go-mi
「これこそ醍醐味よね」などと言います。
「最高(によい)!」というほどのニュアンスで使われる「醍醐味」の、本来の意味をご存知でしょうか。
辞書には、「醍醐のような最上の教え」「深いあじわい。ほんとうのおもしろさ」の意と述べられています。牛乳を煮詰め、精製する過程で、乳味、酪味、生酥味、熟酥味、醍醐味の五段階の味(五味)が生じるそうです。最終成果物であり最上の味である醍醐味を、最高の教えを形容する表現として仏教では用いました。元は仏教用語だった言葉が、日常使われるようになり、現代に至ります。
古代日本の特権階級の間で食されていたという醍醐。製法について、確かな文献が残っていないので想像するしかありませんが、チーズのようなものと言われます。どんな味だったのでしょうね?
牛乳は古代も現代も、重要な人類の栄養源。意外な語源の商品が、私たちの身近にあります。
その一つ。お釈迦様が断食修行をされたときのこと、やせ細ったお釈迦様を近くの村のスジャータという女性が見つけました。彼女はお釈迦様に、牛の乳から作った乳粥を差し出しました。乳粥を飲み干したお釈迦様はたちまち体力を回復され、その味を「醍醐味」と喜ばれたそうです。お釈迦様が苦行を捨て、その後悟りを開かれる場面を描いた話ですが、あのコーヒーフレッシュ、「スジャータ」の製品名は彼女の名前に由来します。
もう一つ。カルピスの創始者三島海雲社長は、開発した新製品につける名前を、最上の味である「醍醐味」がよいと考えました。しかし、「醍醐味」の梵語「サルピルマンダ」と「カルシウム」を合わせた「カルピル」より、次位の熟酥味の梵語「サルピス」を用いた「カルピス」の方が発音しやすい。梵語の権威である渡辺海旭氏に相談すると、「美味という点で醍醐味といって差し支えないだろう」との回答だったので、製品名は「カルピス」と決まったそうです。大ヒットしたカルピスは、ロングセラー商品となりました。
- 『広辞苑・第四版』(岩波書店)
- 『岩波仏教辞典』(岩波書店)
- スジャータ めいらくグループHP
http://www.sujahta.co.jp/item/sujahta/sujahta-himitsu.html - カルピス株式会社HP
http://www.calpis.co.jp/corporate/history/story/3.html