花と森の本願寺〈20〉山折哲雄(YAMAORI Tetsuo)
最近、佐藤愛子さんの、
『九十歳。何がめでたい』(小学館)
を読んで、びっくり仰天。その文庫増補版の帯に「一三〇万部突破の最笑傑作」とあって、大変な売れ行きである。
その単刀直入の語りに魅きつけられ、緩急自在のリズムにのせられ、思わず笑ってしまう。
なるほど、「最笑傑作」とはうまいこというもんだと、一本とられた気分だ。
そういえば瀬戸内寂聴さんにもこれと同じような味がある。お歳は寂聴さんが一年先輩、天衣無縫の語りの調子は、寂聴さんの方がややソフトぐらいで、ほとんどお二人に違いはない。
佐藤さんは卆寿を迎え、めでたい、めでたいといわれ、冗談じゃない、老人の九十歳はそんなヤワなもんじゃない、とタンカを切っている。
佐藤さんにお出会いしたことはないけれども、寂聴さんとはここ一〇年ぐらいのあいだでも何度かお目にかかったことがある。そのたびに口にされるのが
「人生は恋と革命よ」
という名ぜりふで、いつも面くらっていたのだが、そこにはもちろん百戦錬磨の重みがあって、有無をいわせぬ説得力があった。
九十歳になって耳がきこえない、目がかすんでよく見えない、足腰が曲がり意のままにならない――、そんなときにはこれぞとっときの老春タンカというか、そのエネルギーをもらったつもりになっていた。
お二人の来し方を眺めていて、ああ、これこそまさに人間が古典になった姿、たんなる静止画像の中の古典などではない、さっそうとした動画の古典(レジェンド)ではないか、とつくづく思うようになったのだ。
そこで、拙い三行絶句を二首――、
超高齢
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最後っ屁
超高齢
書きたい放題
赤ん兵衛